住宅の外壁は、建物の見た目を整えるだけでなく、雨や風、紫外線から住まいを守る役割を担っています。表面には塗料が塗られていますが、その下には外壁材や下地材、仕上塗材などがあり、いくつもの材料が組み合わされています。
普段の生活では、それぞれにどのような建材が使われているかを意識する機会はあまりありません。しかし、築年数の経過した住宅では、現在とは異なる材料や工法が採用されていることがあります。そのひとつが、過去に多くの建築材料へ使われていた「アスベスト(石綿)」です。

昭和40年頃から平成11年頃までに使用された建築用仕上塗材の中には、アスベストが添加されていた製品があります。
リシンもそのひとつで、すべてのリシンにアスベストが含まれているわけではありませんが、セメントリシン、樹脂リシン、溶剤リシン、弾性リシンなど、過去にアスベストを含む製品が販売されていました。
私が若い頃に塗り替えをしていた住宅では、外壁がリシン仕上げのお家を本当によく見ました。感覚としては、塗り替えに伺う住宅の半数以上がリシンだった時期もあります。
リシンは、細かな骨材と塗料を混ぜて吹き付け、ザラザラした艶消しの表面に仕上げる外壁材です。
昔のリシンでは寒水石などの細かな骨材が表面にあるため、指で触ったときに骨材が先に指へ当たります。
そのため塗膜が劣化してチョーキングしていても、一般的な平滑な外壁と比べると粉が指へ付きにくく、お客様自身が外壁の劣化に気付きにくいことがあります。
実際に塗り替えへ伺うと、かなり長い期間塗装されていなかったリシン外壁を見ることもありました。
外壁塗装は単に外壁の表面へ塗料を塗るだけではありません。劣化状況によっては、旧塗膜の除去、ひび割れ補修、下地調整、サイディングの部分交換など、既存の建材へ手を加える作業が必要になることがあります。
そのため、築年数の経過した住宅で外壁塗装や補修を行う場合は、「何を塗るか」だけでなく「現在の外壁が何でできていて、どこまで手を加える必要があるか」を工事前に確認することが大切です。
アスベストとは
アスベストは石綿(せきめん・いしわた)とも呼ばれる天然の繊維状鉱物です。非常に細い繊維が集まってできており、以前は住宅や工場、倉庫、公共施設など、さまざまな建築材料に使用されていました。
住宅では屋根や軒裏だけでなく、外壁材や外壁の仕上塗材、下地調整材などに含まれている場合があります。
外壁に使用される建材では、窯業系サイディング、スレートボード、押出成形セメント板などの成形板があります。また、外壁表面の模様や質感をつくるリシン、吹付けタイルなどの仕上塗材にも、アスベストを含む製品が存在していました。
外壁の表面を見ただけで、アスベストが含まれているかどうかを判断できるとは限りません。
藤原ペイントでは、外壁塗装の現地調査を行う際、塗膜だけを見るのではなく、外壁材の種類、ひび割れ、浮き、過去の補修跡、シーリング、下地の状態なども確認し、どのような施工が必要になるのかを考えます。
建築年だけではアスベストの有無を判断できません
重量の0.1%を超えてアスベストを含む製品は、2006年(平成18年)9月1日から原則として製造、輸入、譲渡、提供、使用が禁止されています。
そのため、2006年より前に建てられた住宅では、外壁や屋根、軒裏などにアスベスト含有建材が使用されている可能性があります。
ただし、「2006年以前の住宅だからアスベストが入っている」と決めることはできません。
同じ年代の住宅でもメーカーや製品が違います。また、増築、外壁の張り替え、部分補修などによって、一軒の住宅の中に異なる年代の材料が混在していることもあります。
私自身、築年数が同じくらいのお家を何軒見ても、外壁材や下地の状態が全く同じということはありません。
ですから藤原ペイントでは、築年数だけを見て施工方法を決めるのではなく、実際の建物を確認することを大切にしています。
外壁塗装でもアスベストの事前調査が必要です
アスベストの事前調査は、建物をすべて取り壊す解体工事だけのものではありません。
建築物の解体・改修工事を行う場合には、工事対象となる建材について、あらかじめ石綿含有の有無を確認する必要があります。
外壁塗装でも、旧塗膜の除去、下地補修、サイディング交換など、既存建材へ手を加える作業があります。
特に、削る・切る・壊すといった作業が必要になる場合には、通常の外壁塗装と同じ感覚で施工を進めることはできません。
2023年10月1日以降に着工する建築物の解体・改修工事では、建築物石綿含有建材調査者など、一定の資格要件を満たす者による事前調査が必要とされています。
また、一定規模以上の解体・改修工事では、事前調査結果を行政機関へ報告する必要があります。
- 建築物の解体工事で、解体部分の床面積の合計が80㎡以上
- 建築物の改修工事で、請負金額の合計が税込100万円以上
ただし、100万円未満だから事前調査そのものが不要になるわけではありません。
分からない場合は分析調査で確認します
設計図書や建材の商品名などからアスベストの有無を判断できない場合は、必要に応じて建材の一部を採取して分析します。
藤原ペイントでは、必要な場合には分析調査会社へ直接試料を送り、アスベスト含有の有無を確認しています。
調査内容によって金額は変わりますが、藤原ペイントで現在依頼している方法では、3万円程度で分析できるケースがあります。
お客様からすると、目に見えないアスベストに大きな費用がかかること自体が負担になると思います。
そのため私は、必要な安全確認はきちんと行いながら、できるだけ余計な中間費用を増やさず確認できる方法を選んでいます。
なお、建材の採取は粉じんを発生させる可能性があるため、住宅所有者の方がご自身で外壁を削ったり採取したりすることは避けてください。
アスベストが確認された外壁では施工方法を変えます
アスベストが確認されたからといって、必ず外壁を全部撤去しなければならないとは限りません。
建材の種類、状態、予定している作業によって施工方法は変わります。
私の経験では、アスベストを含む古い仕上塗材が確認された住宅では、粉じんの発生や周囲への影響をできるだけ抑えることを第一に考えます。
藤原ペイントでは、そうした外壁で高圧洗浄を前提とした施工は行いません。
高圧の水で表面へ強い力を加えるのではなく、既存の仕上塗材をできるだけ傷めず、飛散させない方法で下地を整えることを考えます。
古い住宅ではアスベスト以外にも高圧洗浄を避けたい理由があります
もうひとつ、これはアスベストとは別の話ですが、古い木造住宅を長く塗装してきた中で、高圧洗浄を避けたいと感じる理由があります。
昭和から平成初期頃の住宅では、軒天井にプリント合板が使われていることがあります。
当時は、軽く、施工しやすく、比較的安価な新建材として多く使われました。
しかし古いプリント合板では、接着層が水分や湿気の影響を受け、合板同士が剥離したり、表面が波打ったりすることがあります。
これは軒天井へ高圧洗浄を直接当てなければ大丈夫、というほど単純ではありません。
私の経験では、軒天井から少し下までしか洗浄していなくても、飛沫や湿気の影響で古い合板へ変化が出ることがあります。
だから私は、古い建物ほど「高圧洗浄することが正しい」と決めつけず、建物を見て洗浄方法を変える必要があると考えています。
高圧洗浄を使わない場合は手作業で下地を整えます
高圧洗浄を行わないからといって、汚れた外壁の上からそのまま塗料を塗るわけではありません。
私たちは時間がかかっても、ダスター刷毛などを使い、既存塗膜をできるだけ傷付けないようにしながら、外壁へ付着したホコリや汚れをできる限り払い落とします。
サッシや窓ガラスはもちろん、塗装する雨戸、雨樋、小庇などについても、必要に応じて何度も水拭きを行います。
「洗浄機を使わなかったから手を抜いた」のではなく、建物を傷めないために、時間をかけて別の方法で塗装できる状態をつくる。
これが古い住宅を塗装するときの私の考え方です。
取り切れない部分まで考えて下塗りで下地を固めます
古いリシン外壁では、ダスター刷毛などで丁寧に清掃しても、細かな凹凸の奥まで完全に新品のような状態にすることはできません。
そこで藤原ペイントでは、外壁の状態に応じて、日本ペイントのパーフェクトシーラーなど、浸透性と含浸補強性能の高いシーラーを使用します。
パーフェクトシーラーは下地への浸透性と含浸補強性を持ち、高い付着力を発揮する下塗り材です。
私はこの下塗りを、単に「上塗りを付着させるための1回」とは考えていません。
弱くなった下地へしっかり浸透させ、下地そのものを次の塗膜を支えられる状態へ整える工程として考えています。
1回下塗りをしても、乾燥後に下地がまだ強く吸い込んでいる状態なら、それで終わりにはしません。
下塗りを塗り重ね、乾燥後にも表面へしっとりとした濡れ感が出て、下地の吸い込みが止まったことを確認してから次へ進みます。
藤原ペイントでは基本的に1日1工程です。
その日のうちに下塗りを何回も急いで重ねるのではなく、乾燥させて状態を確認し、必要であれば翌日にもう一度下塗りをします。
完璧な下地ができてから、その次の日に中塗りを行う。
築年数の経過した住宅ほど、私はこの順番を大切にしています。
アスベストがあるかより「何をする工事なのか」を確認します
アスベストが確認された場合も、「アスベストがあるから全部撤去する」「塗装だからそのまま施工する」と単純には判断できません。
建材の状態と、実際にどのような工事を行うのかを確認する必要があります。
特に、削る、切る、壊す、機械で研磨するといった作業は、粉じんの発生に直接関わります。
石綿含有仕上塗材を電動工具などで除去する場合には、法令に基づいた飛散防止措置も必要になります。
外壁を残したまま安全に施工できるのか。
補修が必要なのか。
加工や撤去を伴うのか。
私は「アスベスト」という言葉だけで工事を決めるのではなく、現在の建物と実際の施工内容を見て判断することが大切だと考えています。
築年数の経過した住宅ほど工事前の確認が大切です
長く塗装の仕事をしていると、今の住宅ではあまり見なくなった材料や工法に出会うことがあります。
リシン、古いサイディング、プリント合板の軒天井など、それぞれに施工された当時の理由があり、それぞれに現在の注意点があります。
だからこそ、昔の住宅へ現在の標準的な施工方法をそのまま当てはめればよいとは考えていません。
何の材料なのか。どのくらい劣化しているのか。水をかけても大丈夫なのか。削っても大丈夫なのか。どの下塗りなら下地を整えられるのか。
こうしたことを一つずつ確認する必要があります。
藤原ペイントでは、塗料の商品名だけで工事を決めるのではなく、実際の住宅を確認して、その建物に合った施工方法を考えることを大切にしています。
