塗装工事というと、多くの方は「何色を塗るか」「どんな塗料を使うか」に目が向くと思います。
しかし、実際に塗装の仕事をしている私が重要だと感じているのは、塗る前にどこまで下地を整えられているかです。
特に鉄部や金属部分では、サビや浮いた旧塗膜を残したまま上から塗っても、見た目だけは一時的にきれいになります。
ただ、その下に悪い部分が残っていれば、後から剥がれたり、再びサビが出たりする原因になります。
そのため藤原ペイントでは、塗装前のケレンを「ただ削る作業」とは考えていません。
新しい塗料がきちんと密着できる状態をつくるための、塗装品質を支える下地処理だと考えています。
ケレンとは?
ケレンとは、塗装前に行う下地処理のひとつで、主にサビ、浮いた旧塗膜、汚れなどを除去し、塗料が密着しやすい状態へ整える作業です。
特に鉄部では非常に重要な工程です。
私は現場で鉄部を見るとき、まずサイディングの家なのか、昭和や平成初期に建てられた家なのかを見ます。
比較的新しいサイディング住宅では、付帯部などにガルバリウム鋼板が使用されていることが多く、古いブリキや鉄と比べるとサビが発生しにくい素材です。
そのため、現在サビが見えていないという理由で、見積もりの段階から防錆下塗りを含めない施工内容になっているケースもあります。
しかし藤原ペイントでは、今サビが出ていなくても、しっかりケレン・目荒らしを行い、その上から適切な下塗りを施工します。
サビ止めや金属用プライマーには、防錆だけでなく、下地と次に塗る塗料との密着を高める重要な役割があるからです。
表面がきれいだからそのまま塗るのではなく、細かな傷を付けて塗料が食いつきやすい状態をつくる。この「足付け」もケレンの大切な役割です。
錆びていない金属にも下塗りを行います
藤原ペイントでは、金属部分の下塗りとして日本ペイントのパーフェクトプライマーを使用しています。
パーフェクトプライマーは幅広い下地に対応し、変性エポキシ樹脂による高い密着性を持つ下塗り塗料です。
私はこの塗料を、できるだけ各現場ですぐ使用できるように常備しています。
理由は、工事をしているとお客様から「この玄関灯も塗れますか?」「この小さな物置もついでにお願いできますか?」とご相談いただくことがあるからです。
アルミ製の門扉など、素材に応じた確認は必要ですが、対応できるものであればその場で状態を見て施工します。

一般的な会社では、小さな追加工事でも担当者や営業マンへ確認し、追加金額を決めてから、お客様が施工するかどうかを判断する場合があると思います。
藤原ペイントでは、私自身が現場に入り、その場で判断できます。
そして、ちょっとした玄関灯や小さな物置など、私がお客様の立場だったら「せっかく塗装しているのだから、ついでにここも塗ってほしい」と思うような内容であれば、基本的に追加費用をいただかず対応しています。
最初からそう決めているので、私も従業員も金額の確認で作業を止める必要がなく、気持ちよく対応できます。
塗り終わったあとにお客様が喜んでくださるのを見ると、私たちもやって良かったと思います。
昭和や平成初期の鉄部はサビの進み方まで確認します
一方、ブリキや鉄が多く使用されている昭和や平成初期のお家では、見方が変わります。
私は単に「サビがあるかどうか」だけでは判断しません。
サビが表面的なものなのか、塗膜の下まで進んでいるのか、旧塗膜がしっかり密着しているのか、それとも浮いているのかを確認します。
残してよい旧塗膜まで無理に全部落とす必要はありませんが、密着していない部分を残してはいけません。
ここを見極めることが、ケレンでは大切です。
ケレンが必要な理由
どれだけ性能の高い塗料を使用しても、下地が悪ければその性能は発揮できません。
例えばサビの上からそのまま塗装した場合、塗料はサビそのものへ密着している状態になります。
そのサビが後から浮いたり剥がれたりすれば、上に塗った塗膜も一緒に剥がれます。
旧塗膜についても同じです。
下の塗膜がすでに密着力を失っているのに、その上へ新しい塗料を重ねても、土台そのものが弱い状態です。
私は「新しい塗料を何回塗るか」より前に、「何の上へ塗るのか」が重要だと考えています。
そのため、浮いた塗膜やサビを適切に処理してから次の工程へ進みます。
ケレンの種類
ケレンには、劣化の程度や求められる仕上がりによっていくつかの方法があります。
一般には、1種・2種・3種・4種ケレンなどに分類されますが、住宅塗装で行うケレンは、実際の劣化状態を見ながら必要な処理を選びます。
軽いサビや足付けであれば、サンドペーパーや研磨パッドなどで処理します。
サビが強い部分や旧塗膜の浮きが大きい場合は、ワイヤーブラシや電動工具を使用することもあります。
ここで大切なのは、「強く削れば削るほど良い」わけではないということです。
必要以上に削れば素地を傷めることがありますし、反対に処理が甘ければサビや浮いた塗膜が残ります。
私は長年塗装をしてきた中で、ケレンは「削る量」ではなく、次に塗る塗料が正常に密着できる状態まで整えることが重要だと考えています。
ケレン作業の工程
実際の作業では、最初に塗装する部分の状態を確認します。
サビの程度、旧塗膜の密着、表面の汚れ、素材の傷みなどを見て、どの道具を使うかを決めます。
サンドペーパー、研磨パッド、ワイヤーブラシ、皮スキ、電動工具などを、場所や状態に応じて使い分けます。
そして、削った後の清掃も重要です。
ケレンをすると細かなサビ粉、塗膜片、研磨粉などが出ます。
これを残したまま塗装すると、その粉の上へ塗料を塗ることになります。
せっかくケレンをしても、最後の清掃が不十分なら密着不良の原因になります。
そのため、削って終わりではなく、粉や汚れを取り除き、塗装できる下地になっていることを確認してから次の工程へ進みます。
ケレンと塗装品質の関係
ケレンの良し悪しは、塗装直後には分かりにくい部分です。
上から塗料を塗ってしまえば、見た目だけならきれいに仕上がることがあります。
しかし、時間が経ってから差が出ます。
浮いた旧塗膜やサビが残っていれば、その部分から再び膨れや剥がれ、サビが出てくる可能性があります。
反対に、悪い部分を適切に除去し、密着する下地をつくっていれば、塗膜が安定しやすくなります。
私は、塗装の耐久性は上塗り塗料だけで決まるものではなく、その下にある工程の積み重ねで決まると考えています。
これは鉄部だけではなく、外壁塗装全体に共通する考え方です。
ケレンを怠るとどうなるのか
ケレンを省略したり、必要な部分まで処理しなかったりすると、施工直後はきれいでも、後から不具合が出る可能性があります。
代表的なのが、塗膜の剥がれ、膨れ、サビの再発です。
特にサビが進行している部分では、表面だけ軽くこすって上から塗装しても、内部に残った腐食が再び表へ出てくることがあります。
ただし、ケレンをしたからサビが永久に出なくなるわけでもありません。
鉄は、塗膜が傷んで水分や空気に触れれば再び腐食します。
だからこそ、ケレンで適切な下地をつくり、その上へ防錆性や密着性を持つ下塗りを施工し、さらに上塗りで保護するという工程が重要です。
良質なケレン施工とは
ケレンは、完成した後にはほとんど見えなくなる工程です。
そのため、お客様からすると「本当にちゃんとやっているのか分かりにくい」と感じる部分だと思います。
私は、こういう見えなくなる工程こそ、施工中に確認できるようにすることが大切だと考えています。
藤原ペイントでは、工事中の施工状況を毎日の動画でお客様へ報告しています。
ケレンや下地処理も、塗って隠れてしまう前の状態を確認していただけるようにしています。
完成写真だけでは、下地処理をどこまで行ったかは分かりません。
ですから、業者選びでは「どんな塗料を使うか」だけでなく、ケレンや下地処理をどう行うのか、施工中の工程を確認できるのかも見ていただきたい部分です。
ケレンは塗装後に見えなくなるからこそ重要です
外壁塗装や鉄部塗装は、ただ色を付け直す工事ではありません。
傷んだ部分を確認し、必要な処理を行い、新しい塗料が正常に密着できる状態をつくったうえで塗装します。
ケレンは、その中でも非常に地味な工程です。
しかし、塗り終われば見えなくなるからこそ、私は重要だと考えています。
サビをどこまで落としたのか。
浮いた旧塗膜を残していないか。
表面をきちんと足付けしたか。
削った粉を除去してから塗ったか。
そして、その素材に合った下塗りを施工したか。
こうした一つひとつの作業が、最終的な塗装の品質につながります。
藤原ペイントでは、塗料の商品名だけに頼るのではなく、塗る前の状態を整えてから塗ることを大切にしています。
